撒くだけでコンクリート養生を実現するコンクリート養生の新技術

1．はじめに

コンクリート床面のひび割れを減らすための対策は様々あるが、打設後のシート養生の有無はひび割れ抑制に大きく影響される。本来は打設当日の土間仕上げ終了後のシート養生（写真1）を行うことが望ましいが、昨今の働き方や時間規制の観点から、打設翌日にシート養生を行うことが多い。また土日を閉所する現場が増え、例えば金曜日にコンクリート打設を行うと養生は月曜日に行う現場もあると言う。これでは本来望んでいる養生効果は得られない。

そこで今回は散布のみで養生効果が得られ、昨今の働き方に適した養生材「フィックスガード」（写真２２）を紹介したい。この養生材は打設当日の土間仕上げ終了後に散布（写真３）するだけでコンクリート表面の保水を3日程度持続することが可能である。特に水分蒸発が活発な土間仕上げ直後から散布することで急な乾燥を防止し、水和結晶の進行を健全化することで短期間でも養生効果を最大化することが本製品の目的でもある。また直射日光が当たる場所や風などの急乾燥により水分蒸発の著しい場所にも最適で、夏の温度上昇にともなう凝結遅延材としての利用（写真４）にも最適である。材料の特性は高分子型ノニオン系界面活性剤で原液160gに対し水で希釈し散布するものである。（施工要領は下記より）これで3日前後の初期養生を確保することが可能となる。

本来コンクリート養生の期間は打設後7〜10日とされているが、実際には工期等の観点から5日程度（写真５）が一般的となっている。ただコンクリート養生は長期間行うことよりも、打設後、いつ養生を行うかが最も重要と筆者は考える。コンクリート表面の水分蒸発によって水和結晶が損なわれ乾燥収縮から初期ひび割れが発生することを考えると、養生のタイミングは打設当日の土間仕上げ終了の直後から2〜3日間（写真６）がもっともコンクリート表面の保水が必要なゴールデンタイムと考える。

2．表面強化材との相性

これまでにも散布型の養生材は存在してきたが、 皮膜タイプがほとんどで養生効果としては認められるが表面強化材や塗床材との付着の相性が懸念されてきた。その点を踏まえフィックスガードは浸透タイプで、一時的な保水を持続させたのちは自然蒸発し5日〜6日程度で水分はほぼ抜けていることが水分逸散試験の結果（表１）からも明らかにされた。またフィックスガードと表面強化材との相性を測る付着強度試験においても普通コンクリートの平均0.7N以上の確保に対し全数1.5N以上の付着（表２）が認められている。またフィックスガードは散布の有無による圧縮強度の影響においても表３の通り異常値は見られなかった。

3．フィックスガードの施工要領

フィックスガード散布の用途は打設時に行う場合と、打設終了後の養生時に使用する場合とがあり、打設時に使用する場合、原料160gに対して100ℓの水（写真７）に希釈し、散布面積としては500㎡〜最大700㎡程散布することが可能である。打設時は生コンのフレッシュ時となるため単位水量に影響のない程度とされる１㎡あたり200g以内を規定散布量としている。 また養生時に散布する場合は160gに対して75ℓの水で希釈し散布面積は75ℓで500㎡程度としている。また散布は指定の噴霧器（写真８）で行うことで一定量を均一に散布し、施工時にムラがないように行う。

4．散布養生による作業時間

通常の散水シート養生では面積1000㎡の場合、作業人数は3人〜4人で作業時間は5時間程度かかるのに対し、フィックスガードは同様の1000㎡程度で作業人数1人で作業時間は30〜40分程度で終了する。昨今の人材不足や残業の時間規制においてもフィックスガードは時間短縮と経済面においても有効であることがわかる。

5．廃材が不要になる

シート養生と散布養生の決定的な違いはポリフィルムシートの廃材（写真９）が不要となり、撤去費用がかからない点にある。昨今の環境問題を考えるとひと現場から排出される廃材をいかに低減していくかが施工者に求められる時代となっている今、散布型の養生はコンクリートひび割れ対策の一助として今後需要は拡大していくものと考える。

5．おわりに

コンクリート施工はこれまで長年変わらない施工方法で行われてきた。一方、社会はこの20年だけを見ても目まぐるしく変化している。ITやAIといった情報革命や人工知能による仕事の効率化、EC決済による物の調達スピード、それに伴い働き方や工数、時間まで短縮されつつある。我々建設業を担う施工者も技術革新を共有し合い、実用化を加速することで施工品質、合理化、省力化、時短作業の実現は可能なのではないだろうか？それが人手不足を解消する近道であると筆者考える。

この記事を書いた人：DXマテリアル株式会社　尾島浩二